NO RULES

 

 

はじめに

なぜNetflixは成長出来たのか?

 

Netflixでは、貼り紙で示されるようなルールは存在しない。そのかわりに、判断基準を与えて、あとは成果を挙げる事が期待される。どのように成果を挙げるかは自分次第だ。そして、成果を挙げていないと判断されると、十分な退職金を与られた上で解雇される。

 

この文化が成長を支えた。何故これらが成長を支えるのか?それは、この文化で生きられる人間というのは、最高の人材であるからだ。

 

まず、ルールというものは、そもそも社員の相応しく無い行動を防ぐものであり、最高の人材には必要無い。最高の人材が最高の仕事をするための足かせになるようなものは、排除すべきである。そして、Netflixでは最高の仕事以外は認められない。なので、お互いが最高の仕事をするために、歯に衣を着せない率直なフィードバックが毎日頻繁に行われる。

 

全ては、最高の人材が最高の仕事をして最大の貢献をNextflixにするためである。

 

最高の職場=最高の同僚

2001年にNetflixは大規模なレイオフをする必要に迫られた。そして、本当に優秀な人材以外を解雇した。その後、残った人たちの中に会社に対しての不信感が生まれるだろう、と想像したが、実際は、社内の空気は劇的に良くなった。この経験が、「能力密度」を高める事の重要性に気づくきっかけになった。全員が優秀であれば、社員がお互いに学び合い、モチベーションを刺激し合うので、パフォーマンスは限りなく向上して行く。逆に、凡庸な社員の働きぶりは、パフォーマンスを低下させる方に、職場全体に伝染する。Netflixは、能力密度を高めるために何でもする。とびきり優秀な人材のみの採用をして、業界トップレベルの報酬を払う。また、好ましく無い行動をする社員や、卓越した成果を挙げていない社員に対しては、勇気と規律を持って解雇を言い渡す。

 

本音を語る

リードはお互いどうしたらもっと良いパートナーになれるかを、お互いに率直なフィードバックを与え、受け取る事で離婚危機を乗り越えた。以来、仕事でも率直なフィードバックを取り入れるようになった。社員同士がお互いの改善点を教え合う事で、成果が高まり、会社全体の業績を向上させた。

 

改善点を教え合えるような率直なカルチャーを育てるために、ネットフリックスでは、3つの事を実践している。

 

1つ目は、部下から上司へのフィードバックをさせる事だ。上から実践するのだ。そのお返しに部下へのフィードバックをする。部下からのフィードバックを受ける際に大事な事は、帰属のシグナルをしめす事だ。「フィードバックを与える事で、この部族で一段と重要なメンバーになる」「正直に話した事で関係がおかしくなることはない。あなたは仲間だ」とフィードバックを与えた人が感じられるようにすることが大事だ。また、部下から上司へのフィードバックをする事により、上司が裸の王様になる事を防げる。階層が上に行くほど、意見を言ってくれる人は少なくなるものだ。

 

2つ目は、フィードバックのガイドラインを作成し遵守する事だ。ネットフリックスでは、4Aというガイドラインを設けている。1.相手を助けようという気持ちで(aim to assist)、2.行動変化を促す(actionable)、3.感謝する(appreciate)、4.取捨選択(Accept or discard)。

 

3つ目は、相手を侮辱するような嫌な奴は排除する、である。

 

これが出来るようになると、どのような行動が会社のためになるのか、またならないのかを、全員がオープンに話し合えるようになるので、上司は部下の仕事を細かく監督する必要が無くなる。 

 

休暇規定を撤廃する

大事なのは、何時間働いたかではなく、何を達成したかである。この理念をより明確にするために、休暇規定を撤廃した。最高の仕事をしていれば、次のルールに基づいて、休暇をいくらでも取れる。①会社の利益を優先させる②他の人の目標達成の邪魔をしない③自分の目標を達成する。休暇規定の撤廃は、最高の人材を引き付ける事、また、当事者意識を高め、より責任のある行動を社員が取るようになった事に役立った。自由を与えられる事で、より自分の頭でどう振る舞うべきかを考えるようになった。

 

出張旅費と経費の承認プロセスを廃止する

優秀な人材にとってルールが足かせになる事がある。ネットフリックスでは、ネットフリックスの利益を最優先に行動するという方針のもとで、上司の承認無しで、億単位のお金を使うことが出来る。とは言え、入り口にコンテキストを設定し、出口では目を光らせている。コンテキストは次のようなものだ。「何かを買う前に、私や直属の上司の前で、なぜそれにお金を使おうと決めたのかを説明する場面を想像してみて欲しい。堂々と説明できると思ったら、上司にお伺いを立てる必要はない」。しかし、裏切るようなお金の使い方をしたことが発覚した場合、一発でクビになる。承認プロセスの排除は、今会社にとって必要なものを、現場判断で、タイミングを逃す事なく、調達するために役立つ。お金を使うのに、旧来型の幾十もの上司の承認を待つのは、ネットフリックスのスピード感では無い。上司としても、承認プロセスという仕事を減らせる。

 

情報はオープンに共有

情報をオープンにするメリットは、社員の責任感、当事者意識が高まる事がまずある。Netflixは、社員に会社のオーナーという意識を持ってもらい、会社の成功への責任感を強めて貰いたいと思っている。他の会社ならば経営幹部しか見れないような情報も社員に共有することで、上司に情報や承認を求める必要がなくなり、スピードも高まるし、何より、社員には、主体的に仕事に取り組むのに必要な情報を与えるべきなのである。

 

また、もしリーダーとして恥ずかしいと思われる失敗をした場合も、隠すのではなく、公表すべきだ。リーダーが失敗を公表する事で、失敗するのは恥ずかしい事ではないと誰もが考えるようになる。全体がリスクを取るようになり、イノベーションが活発に生まれるようになる。

 

ちなみに、人は、失敗や弱点を自分が晒す場合は、自分を弱く無能に感じるが、人が打ち明ける様については、勇気のある、優れた行為だと感じるものだ。

 

逆に秘密主義のデメリットは、コミットしようとしている社員に対して、除け者にされたように感じさせる、自分に関する事ですら、自分の知らないところで進み、信用出来ないと思わせる事になる。

 

意思決定に関わる承認を一切不要にする

たいていの会社では、上司の役割は部下の判断を承認あるいは阻止する事だ。だがそれは確実にイノベーションを阻害し、成長を鈍化させる。Netflixは社員にリスクを取ってのチャレンジを期待している。チャレンジを後押しして、また失敗を恐れないカルチャーを組織として作っている。能力が高く、経営幹部と同じ情報を持ち、結果として、当事者意識の高い社員は、上司に判断を仰がずとも自分で判断が出来るとされている。Netflixでは、"上司の方が正しい判断能力を持っている"という常識は無い。Netflixに貢献出来ると判断したなら、上司の反対を押し切ってでも、実行しないといけない。それをしないのは、Netflixへの裏切り行為とされている。また、例え失敗したとしても、失敗で評価が低くなる事は無い。リスクを取らない事こそ評価を低くする。ただし、周りを押し切って進めることは問題ないが、周りに耳を傘ないことも、評価を低くする。反対意見を広く募り、たくさんの人の意見を聞いた上で、賭けに出なくてはいけない。失敗は、評価を低くするどころか、広く公表する事で、皆の教訓になる。また、公表する事で(特に上級職の人ほど)、失敗を恐れない、リスクテイクのしやすいカルチャーが浸透して行く。

 

”上司の反対を押し切ってでも”という部分には、ピーターの経験が関わっている。周りに耳を貸さずに、大失敗をした事があるのだ。以来、正しい判断が出来るのは自分だけだという考えを危険だと考えるようになった。「自分は違うと思うけど、ピーターはいつも正しいからな、、、」という意見を摘まないカルチャー作りは、この失敗の反省によるところもある。

 

キーパーテスト

Netflixにいるには、常にNetflixが”欲しい”と思う存在であり続けなければならない。プロスポーツチームでは、ベンチに入れる人間は一握りだ。ベンチに入ったらずっとベンチに入り続けられるということはない。Netflixも同じだ。ベンチに入れておくべき人間かを、テストされる。Netflixの目指すチームは次のようなものだ。

「高い成果を挙げるチームでは、プレーヤー同士の協力と信頼のレベルが高い。それは全てのメンバーがそれぞれの役割において圧倒的に優れているだけでなく、他のメンバーと協力することにおいても優れているからだ。自らのスキルが高いだけでは、個人としての傑出したプレーヤーとは認められない。私心を捨て、自らのエゴよりチームの利益を優先させなければならない。ボールをパスすべきタイミングやチームメイトの成功を助ける方法を心得、自らが勝利する唯一の方法はチームを勝利させることだと理解している。」

ベンチに入れるかの判断は、キーパーテストという手法で行われる。「チームメンバーから明日退社すると言われた時に、本気で引き止めるか、それとも、ほっとするか。」を上司は部下に対して考える。これは上司から部下だが、部下から上司にこれを聞くことも出来る。定期的に自分の評価を聞くことで、このチームで選手として活躍するためのフィードバックを得られる、という効果もある。

ちなみにNetflix離職率は、それでも業界平均と同水準。

 

フィードバックサークル

特に新しく入った人に取って既存メンバーにフィードバックをするという事は心理的なハードルがある。そのための2つの仕組みが、実名を明かす年1回の360度評価、ライブ360である。360度評価では、誰に対してでもフィードバックを与える事が出来る。実名を明かす事で、誰が書いているのかバレないようにボヤッとしたものではなく、具体的なフィードバックを受け取ることが出来る。当然だが、相手の成功を助けるための内容である。肝となるのは、上司がフィードバックを受け取ったら、特に否定的なフィードバックを皆に共有するという事だ。フィードバックを与る事は感謝される事で、受け取る事もまた怖いものではない、と伝えることが出来る。次にライブ360だ。チームで集まり、順にフィードバックを与え合い、受け取ったフィードバックについて話し合うのだ。フィードバックを受け取れば、なぜそのような行動を取ったのかを説明し、解決策を出さなくてはならない。皆で話す事で、どう解決するのがチームにとって良いのかを明らかに出来る。チームの成果につながる個人に帰属する問題に皆で取り組む事が出来る。また、チームの人間関係の理解を深めてより上手に協力し合う方法を見つけることに役立つ。再三になるが、フィードバックは贈り物なのである。これらにより、フィードバックは当然与えるもの、受け取るものに変わる。

 

コントロールではなくコンテキストを

ビジョンや目的に対して足並みを揃えられれば、コントロールはいらない。

 

どう行動するかは社員がそれぞれ判断する。何億と使う大きな決断ですら、末端の社員に任せられる。決断する社員は、そのプロジェクトをNetflix内で誰よりも知っている「情報に通じたキャプテン」である事を求められる。判断するための情報は、全て与られている。そして、何を基準に判断したら良いかというコンテキストに応じて、判断を求められる。専門家のアナタがGoならばGoなのだ。

 

CEOが発したコンテキストは広くディスカッションされた上で決定される。その後、コンテキストは、末端まで各部門にそうように形を変えつつ末端まで届く。とはいえ、CEOの発したコンテキスト、さらに、自分の部門のリーダー、その上のリーダーが発したコンテキストは、全て誰にでも共有されている。社員の行動はコンテキストを正しく理解している事が元になる。コンテキストが正しく浸透しているか、目的に対して足並みが揃っているかは、Netflixにとって最重要なものである。面談により徹底される。

 

とはいえ、おかしな判断がそこかしこでされるのでは?と思ったが、フィードバックやキーパーテキストにより、そういう判断をする社員は弾かれている。

 

そして、各社員は、自分の持ち場に於いて、社内一のプロフェッショナルであり責任者として行動を取ることを、任せられる。

 

全てのサービスを世界へ

Netflixのカルチャーは世界で通用するのか?導入するには文化的な差異を各国ごとに吸収する仕掛けが必要。また、そのような仕掛けが必要である事を理解する事自体も大事。例えば、日本では他者に対しての率直なフィードバックに苦手意識を持つ人が多い。しかし、「これに向けて準備をして欲しい、そのための指示書はこれだ」というように文化的な差異を吸収する仕掛けをすると、率直で質の高いフィードバックをするように変わる。カルチャーを浸透させるには、教えるよりも元々そこにあるカルチャーを学ぶ姿勢が大事だ。そして、適用させるのだ。

 

疑問

  • ネットフリックスでの上司の役割とは? 
    • Netflixカルチャーを体現して教える
    • コンテキストを自分の管轄部門で有意義なものに変換する
  • コンテキストに異を唱えられるのか?
    • 同じものを目指す事の徹底がされている点とNetflixに利益をもたらすと信じられている人材しかいない点の2つの前提を元に勿論可能。広く意見を聞いた上で、どうしてもこちらの方が利益を生むと信じるものがあれば、突き進む事が是とされている。逆の言い方をすると、狭い視野で盲目的に突き進む事は許されない。

日本を最速で変える方法

はじめに

制度や仕組みが成熟した日本では、新しいものを取り入れる事に積極的になる必要が無い。新しいものを積極的に取り入れる日本の周りを見た時に、日本がいつの間にか時代遅れになっている事に気づく。そして、時代遅れな制度や仕組みにより問題が引き起こされている事が、このコロナ禍で露わになった。未来基準で制度や仕組みをアップデートしないと、自然災害や戦争で蹂躙され、資源や食糧など他国におんぶにだっこの国になってしまう。

なぜ日本は変化に弱いのか?

コロナ対応で日本の弱点となった考え方や仕組みは3つ。戦争を起こさないように国が国民を管理する仕組みを排除する考え方、ゼロリスク神話、既得権者が自分の利益を第一にする考え方。

 

例えば他国では給付金の迅速な支給を社会保障番号などの国による個人情報の参照が可能にしたが、日本では、マイナンバーに個人の収入や銀行口座などが紐づいていない。さらに紐付けを法律で禁止している。この根本にあるのが、国に国民の管理を許さない考え方である。変わらないならば、同じ事を許容しないといけない。

 

新規ビジネス側も「良いものは受け入れらる」という発想に縛られている。政治家と仲間になり、既得権益や規制を崩すアプローチが必要だという事に気付いていない。

 

基礎自治体優先の法則で、市町村の意思が大事だとされているが、市町村が使うお金は、国、県から割り当てられるため、市町村がファーストペンギンとなる動きをなかなか出来ない。また、市町村での規制を緩めるにも、国や県に許可を貰う必要があり、更に動きを鈍くする。ちなみに、政令指定都市はその国や県と同等の権限を持つ。

データ連携、DXが日本の全国民を救う

先ず、データ連携がされていたら給付金の迅速な支給が出来た。また本当に困っている人のみに支給するという事も出来る。

 

コロナの給付金以外でも行政が個人情報を共有することで様々な恩恵を受けられる。市民の恩恵で言うと、オンラインで引越し手続きをするだけで、電気や水道など、引越しに伴う手続きも行ってくれると言った事がある。確定申告も、申告せずとも行政が情報を持っているので、申告者の作業負担は、サインのみと言うように変わる。

 

しかし、このデータの共有の障害となるものがある。各自治体ごとに定められている個人情報保護条例がそれである。見直しの話をするのが今なのでは無いか?

テクノロジーを社会実装するための力学

規制は安全や社会秩序を守るために生まれた。しかし時を得て既得権益を守るものとなっているものが散見される。既得権益を守りたい業界は、対抗馬になるかもしれない新しいサービスを命がけで潰しに来る。そして既得権益の力となるのが議員である。新しいサービス側も議員を味方にしないと戦えない。海外では議員を仲間にするために企業は巨額のお金を予算に当てている。

未来を創れる国に

軍事転用されやすいものは扱わない考え方が日本にある。国産ワクチンの開発が遅れをとっているのもこの考え方による。予算が割り当てられないため研究がされていない。「万が一のためにどんな備えをしないといけないのか?」と言う考え方を持たなくてはいけない。

変える必要のあるもの

- 国家緊急権によるロックダウンを可能にする

- 小中学校の教科書を統一する事でオンライン授業を可能にする。先生はメンターの役割に変わる

- 若者の票を高齢者のものより重くする

- 二院制を機能させるために首長の参議院議員兼務を許可する。地方の意見は反映されずらく政党の都合による政治に現状はなっている

病床数が何故増えないのか?

日本は民間病院が多いため病床数を増やす号令を行政がかけられない。民間病院のトップは、その都道府県の医師会長である。「国民の命より開業医が大事」で現されるように傘下の病院にリスクを取らせたく無い、取りたく無いため病床数は増えない。